「人間は,その音声によって判断出来る,又それが一番確かだ,誰もが同じ意味の言葉を喋(しゃべ)るが,喋る声の調子の差異は如何(いかん)ともし難く,そこだけがその人の人格と関係して,本当の意味を現す」(「年齢」(『小林秀雄全作品 18』所収),新潮社)
◯私たちが他者を理解するのは,その人の言葉によってではなく,その人の行動によってです。もちろん,言葉によってその人を理解する部分もありますが,それは,その人が言ったり,書いたりしている内容というよりは,その人の言い方とか書き方という行動的(非言語的)な部分によるところが大きいのではないでしょうか。人間がつく嘘(うそ)は,その内容によってではなく,嘘(うそ)をつくときの仕草や口ぶりや声の調子などによってこそ見破られます。言葉は繕えても,行動には地が出やすいものです。(2020年4月24日)