「たとえどんなに理屈に合った正しい言葉でも,怒りをもって発せられれば,それは相手に伝わらない。」「真理を伝える唯一の方法は,愛をもってそれを語ることである。愛する人の言葉のみが,相手に受け入れられるものである。(ソロー)」(『文読む月日(上)』,トルストイ,北御門二郎訳,筑摩書房)
◯対話において重要なのは,何を言うかということではなく,誰が言うかということである。まったく同じことを言っても,ある人が言えば相手の心に届くし,他の人が言えば相手の心に届かないどころか,強く拒絶されるということがしばしばある。私たちは,友好・信頼関係が築かれている相手の言葉には素直に耳を傾け,その言葉をできる限り善意に解釈しようと努めるが,敵対し,嫌悪している相手の言葉には耳を貸そうとせず,その言葉を悪意あるものとして曲解しがちである。自分の気持ちを相手に正しく伝えたいと真剣に願うのであれば,相手を非難したり,見下したり,軽んじたりすることなく,まずは相手に敬意を払い,同じ人間として相手を尊重し,相手の良いところを積極的に認めるべきである。(2020年3月4日)