「あなたは愛される/愛されることから逃れられない/たとえあなたがすべての人を憎むとしても/たとえあなたが人生を憎むとしても/自分自身を憎むとしても/あなたは降りしきる雨に愛される/微風にゆれる野花に/えたいの知れぬ恐ろしい夢に/柱のかげのあなたの知らない誰かに愛される」(「魂のいちばんおいしいところ」(『はるかな国からやってきた』所収),谷川俊太郎,童話社)
◯私たちが今ここでこうして生きていられるということは,たくさんのものに愛され,支えられ,たくさんの恩恵をこうむっているということにほかならない。たとえ私たちが,他者を憎み,人生を憎み,自分自身を憎んでいたとしても,その事実に変わりはない。そのことに早く気づき,感謝する気持ちを思い出し,他者や人生や自分自身を肯定できるようにならなければ,すなわち,自分がこの世の中に生まれてきたことを肯定できるようにならなければ,この世の中に生まれてきた甲斐(かい)がない。(2020年2月13日)