「大げさなことは言いたくない/ぼくはただ水はすき透っていて冷たいと言う/のどがかわいた時に水を飲むことは/人間のいちばんの幸せのひとつだ//確信をもって言えることは多くない/ぼくはただ空気はおいしくていい匂いだと言う/生きていて息をするだけで/人間はほほえみたくなるものだ」(「ぼくは言う」(『自選 谷川俊太郎詩集』所収),岩波書店)
◯本当のことを言えば,私たちは,ただ水を飲むことにさえ,ただ息をすることにさえ,生きる喜びや幸せを感じることができるのである。欲望を際限なく肥大化させ,今ここでこうして生きていられることの有り難さ(まさに奇跡)に対する感謝の気持ちを忘れるからこそ,私たちは,いま自分の目の前にある幸せにさえ気付くことができなくなってしまうのである。(2020年1月24日)