「人は少ししか知らぬ場合にのみ,知っているなどと言えるのです。多く知るにつれ,次第に疑いが生じて来るものです。」(『ゲーテ格言集』,高橋健二編訳,新潮社)
◯物事は,知れば知るほど疑問が湧いてくる(分からないことが増えてくる)ものであり,少ししか知らないからこそ分かったつもりになれるのである。「知る者は言わず,言う者は知らず」という老子の言葉にもあるように,人間は,成熟し,物事を深く知るようになればなるほど謙虚になり,未熟な,物事を浅くしか知らない人間ほど高慢になりやすい,というのも,同じ理屈なのではないだろうか。逆に言えば,人間は謙虚さを失わない限り成熟し続けることができるが,慢心すればそこで成熟は止まり,未熟なままで終わってしまうということでもある。(2019年12月23日)