「俗界に身を置いているからこそ望みなぞを持ってしまって,その望みが叶(かな)わないと知るからこそ恨みなぞを抱(いだ)いてしまう。」(『平家物語(日本文学全集09)』,古川日出男訳,河出書房新社)
◯たいていの人間は,欲望を肥大化させた挙げ句,世の中に対して恨みを抱くようになる。世の中を恨むことなく,日常生活におけるささやかな満足に喜びや幸せを感じられるようになるためには,俗界を離れて出家する必要まではないと思うが,できる限り簡素で無欲な生き方を自らの意志で選び取ることによって欲望の肥大化を抑える必要があるのではないだろうか。(2019年8月2日)